有限会社山口畜産 山口聡常務取締役 インタビュー

 2020年9月29日に東京食肉市場において、全国霜降り牛研究会第17回枝肉共励会が開催されました。全国霜降り牛研究会は肉牛生産者の飼育管理技術向上と有益な情報交換の機会を提供することを目的として2003年に発足した生産者、畜産関連業者の研究会です。今年は和牛の部に75頭、交雑牛の部に39頭の出品があり、和牛の部において最高賞の最優秀賞、チャンピオン賞を受賞された「有限会社 山口畜産」の常務取締役であり獣医師でもある山口聡様にお話を伺いました。 インタビューは東亜薬品工業株式会社の営業本部長河野と、東日本支店川瀬が担当しました(2020年10月13日に山形県最上郡の山口畜産にて実施致しました)。
 

山口聡様 お忙しい中笑顔で応じてくださいました。


 ◆まずはチャンピオン賞を受賞した牛について、農場での育成や選抜方法をお聞きしました◆
 
─── この度は全国霜降り牛研究会 第17回牛枝肉共励会 チャンピオン賞受賞おめでとうございます!今回の共励会に臨むうえで、事前に受賞を予想されていましたか?
山口様 ありがとうございます!私は予想していなかったのですが、この共励会にはずっと出品していましたし、普段からお世話になっている飼料メーカーが主催なのでそろそろチャンピオンが欲しいなと従業員とも話をしていたところでした。最近、山形県食肉公社へ出荷している牛の枝肉成績が良かったので、「もしかしたら」とは感じていました。東北からチャンピオンが出たのは13年ぶりだったと聞きました。全国から各農場1頭という限られた出品の中で、毎年九州をはじめとした名だたる農場がチャンピオンに選ばれていましたので、この度のチャンピオン賞受賞は悲願が叶った思いでした。
 
─── 山口畜産様では子牛は市場からの導入だけでなく、自家生産も行っているとのことですが、今回の受賞牛はどちらの牛でしたか?また、自家産と導入牛では肥育する上での違いはありますか?
山口様 今回の受賞牛は自家産でした。繁殖を始めてからの試行錯誤が実った結果としても嬉しいですね。自家産の子牛は同じ乾草、同じ飼料メーカーの飼料を使っていること、輸送ストレスもなく牛群も変えずにそのままスムーズに肥育へ移行できるというメリットがあります。外部導入の素牛は当然それぞれの繁殖農場ごとに違う飼料、違う飼い方をしていますよね。そのため飼料の食いつきに大きな違いがあります。
 
─── いかにストレスなく肥育に移行することが重要かということですね。
 

- 受賞牛のデータ -

血統 [父 花国安福、母の父 平忠勝、母の母の父 安福久]
枝肉重量 678㎏
格付 A5等級
BMS No.12
ロース芯面積 118cm2
バラ厚 10.6㎝


 

─── 今回の受賞牛について、詳しく教えていただけますでしょうか?
山口様 これが今回の枝肉の写真です。
 
─── 数字として見ても枝重、ロース芯など素晴らしいですが、写真で見てもとても綺麗な枝肉ですね!
山口様 そうですね。サシもモモまで抜けていますし、特にバラのところは先までぐっと入っているので出荷間際まで食い切ったという事ですね。
 
─── サシも小ザシで本当に綺麗ですね。
山口様 ありがとうございます。当日割ったばかりの枝肉を専務(山口治様)が芝浦で見たときに、1番手か2番手くらいには入るのではないかと言っていました。話は戻りますが子牛から肥育出荷までスムーズに飼える自家産の強みが結果に繋がったと思います。近年の子牛市場では、去勢350㎏以上、雌でも300㎏以上の大型の子牛がセリに上場されていることが多く、このような子牛はうちの農場ではあまり伸びない印象があります。自家産であれば、骨格作りや腹作りを重視してうちの肥育に合う子牛を作れるという強みもありますね。なので、肥育舎に移動した時にそこまで大きくなくても、うちの肥育管理にあった子牛であればこれだけの枝重が出るような大きな牛が出来るのだと思います。実際に今回の受賞牛も子牛のころは特別目立つ牛ではなかったですね。血統や体重を見ても他の子牛と差はなかったです。強いて言えば、母の親が比較的優秀な牛を出している事くらいです。
 
─── 子牛の大きさよりも骨格作りや腹作りが重要なのですね。
 

今回の最優秀賞の表彰状。

─── 自家産の方がご自身の農場に合った子牛を育てられると言っても、繁殖を始めてからなかなかうまくいかない時期もあると思うのですが、その際苦労された点について教えていただけますか?
山口様 そうですね。山口畜産として繁殖を始めたのは15年ほど前になります。まずは40頭ほど導入して担当を決めて繁殖を勉強しようという事から始めました。肥育牛と繁殖牛では、まるで別の生き物のような感じですからね。当時、私はまだ農場にいませんでしたが、お産も初めての経験だし、以前、F1の育成をやっていたことがあるため若干の哺乳の経験はあったものの和牛となるとまた違うので苦労したと聞いています。特に最初は下痢よりも呼吸器系の疾病でダメにしてしまったり、あまり大きくならなかったりという子牛がたくさんいて苦労していましたね。
 
─── そういった部分は、導入牛と比べて難しい点ですね。
─── 現在は農場としての全体の成績も好調なのでしょうか。
山口様 そうですね。今年1年間は特に成績が上がってきているように感じました。 昨年から枝重を平均で去勢550㎏以上、雌480㎏以上、全体の上物率90%以上を目標としています。これまでの成績から考えるとなかなか難しい目標ですが、頑張って上を目指そうという事で設定しました。今年の4~5月の平均成績を見ると去勢540㎏で上物率95%、雌485㎏で上物率90%という成績でロース芯やバラ厚も同様に良好な結果でした。新型コロナの影響で牛の価格も非常に厳しい中でも“良い牛を作ろう”と現場でも話していたのでこの成績が出せたことは非常に嬉しいですね。
 
─── 厳しい状況でもこうして設定した目標の成績を出せている農場があるという事が他の農場の励みにもなりますね。
山口様 昨年から掲げた目標を概ね達成できた事は嬉しい事ですが、今後はさらに上を目指して、上物率やA5率だけではなく、「お肉屋さんが使いやすい歩留まりの良い牛を作ろう」という目標を新たに掲げています。もちろん単純に枝重を上げるだけではなく、更にロース芯やバラ厚を上げて皮下脂肪を2.5に抑えつつ歩留基準値75以上を平均として目指そうと話しています。5年前の枝肉成績と比べても枝重やロース芯、バラ厚は格段に良くなっているので、今後は皮下脂肪を抑え歩留まりが良くなってくれればと思います。
 
─── こういった目標があるから今回の受賞牛のような牛が育つのですね。
 

農場内にて、常務(写真左)と柴崎部長(写真右)。

─── 受賞牛の飼養管理で最も気を使った点は何だったでしょうか?
山口様 選畜が終盤だったという事もあって特になかったですね。飼養頭数が多いというのもありますが、この牛だけとかこの牛群だけといった管理はあまり行わず、マニュアルでの管理が基本です。
 
─── 共励会向けだからと言って区別はしないのですね。
山口様 そうです。今回の全国霜降り牛研究会の選畜を専務が出荷の3カ月前くらいにしたのですが、その時に自家産で良い牛がいるからこの牛を出そうといった流れです。
 
─── 選畜と言えば、山口畜産では、社内品評会として従業員の方全員が選畜を行う”山口セレクション”というコンテストを実施していると聞きました。
山口様 毎年1回やっています。自分達が丹精を込めて育てた牛の中から1頭だけを選畜する事や選んだ牛がどのような枝肉になるのかという勉強になります。普段は社長(山口登様)と専務が食肉市場へ毎回行って枝肉を見ているので、現場の従業員は自分達で枝肉を見る機会があまりないですからね。なので、これをきっかけに普段から良い枝肉を作るために、自分達にも他に何かできることはないかと考えてやってもらいたいなという願いも込めて開催しています。
 
─── 従業員の方全員でというのが良いですね。
山口様 そうですね。当日は、朝5時くらいから早めに作業を始めて終わり次第、みんなで枝肉を見に行くという感じです。余談ですが、毎年この時期になるとみんな作業しながら誰がどの牛を選んだのかなどの話題でソワソワしています。
 
─── やはり、それぞれ自分の担当牛舎から選ぶものですか?
山口様 担当牛舎の牛の月齢がバラバラなので一概にそうとも言えないです。ただ、面白いもので普段見ている牛舎に近いところから選ぶケースが多いみたいです。あと、自分で育成した思い入れなど愛着が沸くからか繁殖担当者は、自家産の牛を選ぶケースも多かったりしますね。従業員一人一人に独自のテーマがあるように感じます。
 
─── 農場の良い雰囲気が伝わってくるエピソードですね。

 ◆続いて、ご愛用いただいているビオスリーについてお話を伺いました◆
 
─── ビオスリーは、何年ぐらいお使いになっていますか?
山口様 10年以上にはなると思います。特に山形県は、どこの農家さんに行ってもビオスリーは置いてあるイメージなので、NOSAI山形で獣医として働いている時から当たり前のように使うものだとずっと思っていました。山形県は、ビオスリーの愛好家が多いのではないですか?
─── ありがとうございます。確かに全国的にも見ても山形県は特に多いですね。
山口様 うちもその1つで、なくてはならない離れられないものだと思っています。
 

農場内にビオスリーエースが積んであるところを発見

─── 長年ご愛顧いただきありがとうございます。現在の使用プログラムを教えていただけますか?
山口様 全体のプログラムとしては、20g/日/頭が基本で、8ヶ月齢での肥育舎導入から13ヶ月齢位までTMR飼料にトップドレスで給与。14ヶ月齢から分離給与が始まるのですがそこでも飼料の馴致期間に使用しています。また去勢20ヶ月齢、雌21ヶ月齢から切り替わる配合飼料には今年6月より、配合1㎏に対してビオスリーエースが5g入るように添加してもらっていて、出荷される30ヶ月齢まで牛が10㎏食べれば50g/日/頭、8㎏だったとしても40g/日/頭給与されている計算になっています。肥育期間中では14ヶ月齢から20ヶ月齢までの期間使用していませんが、この時期にはクロストリジウムの5種混合ワクチンを接種します。理想を言えば、その期間もビオスリーエースを入れたいのですが、コスト面もあるので後期を重視している感じです。
─── 今年からビオスリーエースをさらに強化したプログラムですね。このプログラムには、どのような目的意識があるのでしょうか。
山口様 まずは肥育舎導入から先程話したようにTMR飼料になるのでお腹の不安定な状況をカバーするのが目的です。飼料が変われば下痢や血便も起きやすくなるため、腸を健康な状態に維持するために給与しようと決めました。後期は、農場の出荷成績や疾病状況などを見比べ毎日給与したいという思いから、飼料に混ぜ全頭へ毎日給与することで、有用な生菌を増加させ腸内細菌叢を正常に維持し、腸管内の有害細菌の増加を抑制するのではないかという思いで採用しました。生菌剤の使い方としても人がヨーグルトを食べるように、継続しないと意味がないものだよと従業員には常々話しています。
 
─── 新型コロナによる枝肉相場への影響が大きい中でのプログラム強化という事ですが、そのプログラム強化に踏み切った経緯についてお聞かせください。
山口様 ビオスリーエースのコストはかかりますが事故が減れば元は十分に取れるため、単価が安い時こそ事故には気を付けようという意識から採用を決めました。今年の4月、5月の良い肥育成績でもこのくらいの値段しか付かないのかと頭を抱えた時期もありましたが、いずれ単価は回復してくると思いますし、これだけ良い成績が継続しているという事は牛としても事故と背中合わせのギリギリの状況ともいえるので、なるべく事故を出さないようにビオスリーエースには縁の下の力持ちになってもらいたいと思っています。
 

ビオスリーエース入りの餌を手にとっていただいたところ、 なんと牛が寄ってきてくれました。思わず常務も笑顔に。

─── 子牛の飼養管理にもビオスリーをお使いいただいているとのことですが、添加量やプログラムなどもお教えいただけますか?
山口様 腸管の健康維持と腹作りを目的にミルクには30g/日/頭入れています。10日齢で親牛から離して人工哺乳に切り替わった時点でスタートして肥育管理へ移動するまで毎日給与します。親牛と一緒にいる間に子牛が下痢を起こしてしまった場合には医薬品の動物用ビオスリーで対応していました。ただ、親牛と同居中は飲ませる作業が大変なので、今年6月に発売されたビオスリーエースタブレットの方が、作業的にも簡単なためそちらを使い始めました。
─── ビオスリーも場面によって使い分けられているのですね。
 
─── 沖縄県多良間島にも繁殖農場があると聞いておりますが、山形との子牛の管理面で違いがあれば教えて頂けますでしょうか?
山口様 もちろん雪国と常夏という気候の違いはありますが、管理プログラムとして大きな違いはありません。以前は沖縄の宮古島や石垣島の子牛というと、全国に比べると小さいイメージがありましたが、ここ数年はサイズや血統を見ても全国の子牛市場とほぼ変わらなくなってきましたね。ただ、先程話したとおり、うちの農場の肥育管理に合う子牛を育成するため、多良間島の農場でも血統の改良は行っていますが、骨格作りや腹作りを重視して子牛を育成しています。
─── 肥育だけでなく子牛の管理にもビオスリーをお役立ていただきありがとうございます。
 

インタビュー時の様子。熱心にお話くださいました。

─── 今後、ビオスリーを継続採用していく上で期待するポイントは何ですか?
山口様 今年は、最初に話した平均歩留まりアップを目標としているので、6月から新しく始まったビオスリーエースのプログラムで事故を減らすことはもちろん、1年後の目標達成への手助けになってくれることを期待しています。簡単に言えば、大きい美味しいお肉を作るバックアップを期待します。

 ◆さいごに、山口畜産様の目指す牛肉、これからの目標について伺いました◆
 
─── 山口畜産様として、「最上級の山形牛を追求し続ける」上で意識しているポイントは何でしょうか?
山口様 うちの社長が常々言っている「もう一口、あともう一口食べたくなる牛肉を作りたい」という言葉があります。どうしてもサシが入っている和牛はたくさん食べられないと言う方が多いです。しかし、そのような方にでも甘みのある脂や肉の美味しさ、山形牛特有のしっとりとした舌ざわりの良い肉質を味わってもらい、お腹いっぱいだけどもう一口食べたいなと思わせるような牛肉を作るというのが目標ですね。
─── 日本が世界に誇る和牛を是非皆さんにも食べてもらいたいですね。
 

実際の肥育牛の様子。大切に思いを込めて肥育されています。

─── 今後開催される共励会に向けての意気込みを教えてください。
山口様 普段から常に良い牛を作り続けた先に共励会での賞の受賞という流れがベストの形だと思っています。新型コロナの影響でまだ分かりませんが、順調に行けば来年の5月に次の全国霜降り牛研究会の枝肉共励会があります。そこへ出品する牛は今回の新しいビオスリーエースのプログラムで育てた牛なので、プログラムを強化した結果として二連覇が付いてくれば嬉しいなとは思っています。
─── 私共としても二連覇を期待しております。時期的にもオリンピックで日本へ来る外国の方を含めた消費者の皆さんへ良いアピールになるかもしれませんね。
─── 山口畜産様では、食肉部を持って自社生産の牛肉を販売しているとのことですが、新型コロナによる影響や消費促進などの対策をお教えいただけますでしょうか。
山口様 山口畜産食肉部では、店舗販売と地域発送、オンラインショップでの販売、ふるさと納税の返礼品なども行っており、海外では香港への輸出もしています。確かに新型コロナの影響で外食を中心とした消費が減ったため、単価も下がっていますが、だからこそ、消費者の皆さんにも同じだけ単価を安くして提供しようという社長からの提案もあって、現在は特売日を設けてお手頃価格で販売しています。
─── この機会にたくさんの方に最上牛を味わってもらいたいですね。
山口様 是非食べてもらいたいです。地元の小学校の食育の一環として農場見学などの受け入れもしていますよ。あと、毎年お世話になっている地域の方々を招待し感謝祭として最上牛を振舞ったりもしています。確か前回は、700名の方に来ていただきました。
─── すごく人気なのですね。
 

販売所の建物の中にはとても美味しそうな新鮮なお肉が並んでいます。

─── 最後に「最上牛」についてPRをどうぞ!
山口様 最上牛には、山形産まれ山形育ちの牛もいれば、沖縄の小さな島で産まれて山形で育ち最上牛や山形牛になるロマンのある牛がいます。”あともう一口食べたくなる牛肉”を、消費者の皆さんはもちろん、バイヤーの皆さんや小売店の皆さんにも喜んでもらえるように従業員みんなで頑張って作っているので皆さん是非、ご賞味ください。 山口畜産HP:https://yamaguchi-bf.jp/
─── 本日はお忙しい中、長時間インタビューにお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。
 
山口聡常務(中央)、MPアグロ㈱菅原様(写真左)、川瀬(写真右)で記念撮影。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。